音声六対
私がまだ学生だった頃、声明の先生より教えていただいたものが、
音声六対(おんじょうろくつい)
と呼ばれる、声明における六つの心得が大谷派では古来より伝えられています。
音聲遣ヒニ六對アル事
- 柔キ冝、弱キハ悪(柔らかきはよし、弱きは悪し)
- 強キハ冝、剛キハ悪(強きはよし、かたきは悪し)
- 静ナルハ冝、濕キハ悪(静かなるはよし、したたるは悪し)
- 緩ナルハ冝、黏キハ悪(緩やかはよし、粘りは悪し)
- 進ムハ冝、窄キハ悪(進むはよし、忙しきは悪し)
- 軽キハ冝、踈ナルハ悪(軽きはよし、疎かは悪し)
<意訳>
声質や発声について、六つの注意点があります。
柔らかい声はよいが、、弱い声になってはよくない。
また、強い声はよいが、剛(こわ)ばった、かたいゴツゴツした声になってはよくない。
静かなる声はよいが、したたる、垂れ落ちるような声になってはよくない。
また、緩(ゆるやか)なる声よいが、粘(ネバ)っこい声になってはよくない。
進むのはよいが、忙(せわ)しく聞こえてはよくない。
また、軽くなるのはよいが、荒っぽくだらしがなく聞こえてはよくない。
音声六対において一番良い声とされているのは「柔らかくて、強い声」とされています。一見、相反する声に思えますが、「柔らかい」に対比されているのは「弱い」声であり、「強い」に対比されているのは「剛い」声です。
微妙に入り組んだ関係になっていますが、これは節譜の扱いのはなしではなく、声質・発声の問題を言っているものです。
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